車中泊すると「やっぱり温水シャワーがあると便利なのに」と思うことあります。電気で温水作れたら便利なのに、車の電装設備ではヒューズが飛んだりバッテリーが上がったりと、ハードルが高くてちょっと・・・。
それでも電気で沸かしたい!ということで、今回は「電気で温水編」です。最後までお読みいただくと、電気で45℃程度の温水20Lを作る方法がわかります。
目次
車内の電源で温水作るのが難しい理由とは
まず最初に、「車内の電源でお湯を沸かすことは、意外に難しい」という不都合な真実をお話しします。
普通のポータブル電源とヒーターではムリ
手頃なポータブル電源。AC100Vのコンセントもついています。これに、水槽用ヒーターをつないでポリタンクにヒーターを放り込めば、ほどよい温水ができそうなものですが・・・実は、そう甘くないんです。
この方法では温水になりません!
なぜなら、20Lの水を温水に変えるには、エネルギーがまるで足りないのです。
確かにそうなんですが、やみくもに買って「あらら、エネルギーが足りない」ということになると、また買い直しになります。
そんなことを避けるためにも、どのくらいの電力量(Wh)で、どの程度の熱(cal)が発生できるか、把握しておきましょう。
そもそも1Whでどのくらい温まるか?
1Wh(ワットアワー)とは
実感がわくように、アウトドアで活躍する懐中電灯を例にします。
Amazonより引用
この写真の懐中電灯には1W(ワット)のLEDが使われています。これを1時間(1hour)つけっぱなしにしたとき必要なエネルギー量を1Wh(1ワットアワー)と言います。
1cal(カロリー)とは
一方、熱の単位1calとは、「水1グラムの温度を14.5℃から1℃上げるのに必要なエネルギー量」のことです。ただ、水1グラムなんて、水滴の1粒。小さすぎるので、1000倍した単位がよく使われます。
1kcal(1キロカロリー)・・・1Lの水の温度を1℃上げるエネルギー量
1Whをkcalに直すには?
これまでご紹介したWh(ワットアワー)は電気エネルギーの単位で、そのままでは、水の温度との関係がわかりません。1Whが何kcal(キロカロリー)になるのか次のようにして直します。
1Wh=0.86kcal
この式をよ~く見ると、こんなことが分ります。
1Wタイプの懐中電灯を1時間ずっとつけっぱなしにする時のエネルギー量では、1Lの水はたったの0.86℃しか温められない
何という不都合な真実でしょうね(涙)
シャワー用の温水には何Whが必要か?
温水シャワーを実現したいのですから、目指す目標はコレです。
20Lの水を15℃から45℃まで温める
このポータブル電源でムリなワケ
冒頭の写真で紹介したポータブル電源ですが、ラベルにはこのように明記されています。
満充電にしたときのエネルギー量は約242Wh。水20Lの温度を何度上げられるかというと・・・
242×0.86=208kcal(1Lの水なら208℃アップ) 208℃÷20L=約10.4℃
15℃の水20Lを温め始めて25℃まで上げたところでエネルギー切れ!
だから、このポータブル電源ではムリなんです。
車でポータブル電源に充電しながらではどうか?
ポータブル電源は、車の12Vアクセサリーコンセントから充電が可能です。
走行中ならバッテリー上がりを気にしなくていいはず。エネルギー切れを防ぐために、ポータブル電源に充電しながらならよさそうですよね。そこで検討してみたんですが・・・
12Vコンセントは上限あり
アクセサリーコンセントには10A(アンペア)のヒューズがついています。10Aを超える電流が流れると、切れてしまうんです。
10A×12V=120W
つまり、120Wを超えることはできません。概ね100W程度にとどめる必要がある、ということを意味します。
100Wで1時間充電したときの電力量は100Whなので、
100Wh×0.86=86kcal(1Lの水なら86℃アップ) 86℃÷20L=約4.3℃
1時間充電し続けても、20Lを4.3℃上げる分のエネルギーしか充電できません(涙)
バッテリー直結で充電できないの?
12Vアクセサリーコンセントでぶつかる10Aの壁。それを回避する方法として、バッテリー直結はどうなのか?
確かに、エンジンを始動するときにバッテリーからエンジンスターター(モーター)に流れる電流は100Aもあります。こんなにパワーがあるんだから、バッテリーに直結すれば10Aの壁なんて破れるはず。
でも、止めた方がいいです。なぜなら、バッテリー上がりのリスクがあるからです。
車はエンジンの回転で発電機(オルターネーター)を回し、スパークプラグをはじめとした電装品をまかなっています。余った電力はバッテリーに貯めて、次のエンジン始動に備えています。
ところが、バッテリー直結で大きな電流を「横取り」し続けると、バッテリーがカラになってしまい、次のエンジン始動時に、エンジンスターターへの電流が賄えなくなる恐れがあるんです。
車中泊中にエンジンがかからなくなったら困りますよね・・・
温水に必要なポータブル電源は何Whタイプか?
もう一度、目標を確認すると
ポリタンクの水20Lを、15℃から45℃まで温めて温水シャワーにする
この目標を達成するために必要な熱量(kcal)は
20L×30℃=600kcal
この熱量を発生させるために必要な電力量(Wh)は
600kcal÷0.86=698Wh
ポータブル電源は空になるまで使い切ると故障するので、最低でも1000Wh以上のタイプが必要で、余裕を持たせるためには1600Wh以上がよさそうです!
1600Whタイプのポータブル電源なら災害時にも役立つ!
そこで、1600Wh以上のポータブル電源を探しました。
1600Whという高容量の電源を単に温水シャワー用で買うのはちょっと気が引けます。でも朗報です。これだけの容量あれば非常電源として活用できます。
災害で電気が何日も止まってしまい、スマホの充電もできず、情報難民になってしまった・・・という話はよく耳にします。そんなときの「命綱」と考えれば、一家に1台あってもいいアイテムです。
- もちろん、車中泊で温水シャワー用電源として
- 災害時の「命綱」、非常電源として
デルタMax1600
そこでAmazonで探してみると、まさにぴったりの電源が見つかりました。EcoFlowブランドのDELTA MAX1600です。
容量が1612Whあるので、温水を沸かすには十分です。非常用電源としても頼りになりますね。
- 純正弦波出力なので精密機器も使える
- 家庭のACコンセントから1.7時間で充電可能
- Amazonのユーザー評価が高い
- 専用の太陽光パネルから5時間で充電可能
Amazonへのリンクを貼っておきますので、覗いてみて下さい。
さて、電源の目処がたったところで、ヒーターについて検討します。
45℃の温水を20L沸かすのに適したヒーターは?
ヒーターには何と言っても安全性が必要
たとえば、カー用品で見かける、コーヒー用の湯沸かしヒーター。値段が安いのはいいのですが・・・
- 温度センサーがないので沸騰して危険
- 縁に引っかけるタイプで水没させると危険
- パワーが小さい
というわけで、とても使えたものではありません。
温水用のヒーターは、安全のために温度センサーと防水性は必須といえるでしょう。
その点、冒頭の写真で紹介している水槽用ヒーターなら、温度センサーと防水性はクリアしています。ただ、残念なことに、センサーは32℃、しかもパワーは100Wしかありません。
センサーが45℃、パワーが1000W程度のもの無いか探してみると・・・。
ぴったりのヒーターが見つかりました!
お風呂用の追い炊きヒーター
お風呂の湯がぬるくならないように、ポチャンと投げ込んで温めるためのヒーターで、「沸かし太郎」という名前で売られています。家に居るときも役に立つアイテムです。
沸かし太郎
特徴は次の通りです
- 本体を丸ごと水没させて使用(完全防水)
- 温度調節範囲30℃~45℃
- 消費電力910W
先ほど述べた様に、45℃の温水を20L作るのに必要な電力量は698Whです。このヒーターは910Wのパワーがあるので
698Wh÷910W=0.77h (時間) 分に直すと=46分
46分前にスイッチONしとけば、勝手に適温の湯が沸いていることになります。なかなかいいですね。Amazonへのリンク貼っておくので覗いてみて下さい。
ポリタンクの温水をシャワーで使う方法は【車中泊】せめてシャワーが欲しいので自作してみたら簡単だった!をご覧下さい。
まとめ
- ポータブル電源「デルタMax1600」
- 追い炊きヒーター「沸かし太郎」
車中泊していても、温水が沸いたら、電動ポンプとシャワーヘッドをセットすれば、温水シャワー三昧!(20Lあれば余裕ですよ)
家に居るときは、災害時非常電源で安心だし、お風呂の追い炊きができるし、なかなか快適になることでしょう。
なお、ポリタンクは保温材で覆う方が湯が長持ちします。こんな保温アイテムもありますよ。
追加情報です
●感電防止のために:ポリタンクの水が車の振動でポータブル電源にかかると感電等の恐れがありますので、設置場所には配慮しましょう。
●誘導負荷の突入電流:電気ドリルなどコイルを使った機器を誘導負荷と言います。スイッチを入れた瞬間に大きな電流(突入電流。定格の5倍程度)が流れる性質があります。ポータブル電源で誘導負荷機器を使いたい場合は、十分に余裕のあるものを選びましょう。(追い炊きヒーターなどは抵抗負荷といい、この配慮は不要です)
●正弦波出力がベター:追い炊きヒーター以外に、いろんな機器を使う可能性があるなら、正弦波出力タイプが安心です。予算をケチって正弦波ではないタイプを使っていると、機器によってはうまく作動しない場合があります。
じゃあ、もっと大型のポータブル電源にすれば?