【登山アプリ】山歩きに大いに役立つスマートフォン。 だが、登山アプリが招く想定外の危険とは?

この記事は、山歩きの安全を願ってまとめたものです。ネタ元は、twitterフォロワーさん「ヤマちゃん」ご紹介の「登山ルート、スマホ過信は危険(熊本日日新聞2021/5/12)」です。登山計画を立てる段階で情報が多くて役に立つスマホの登山アプリなのですが、思わぬ危険が隠れているというのです。詳しくお話ししますので、安全な山歩きのご参考になれば幸いです。

目次

山歩きには地図アプリじゃなく登山アプリを!

山歩きする人の味方、登山アプリ!

スマホ(スマートフォン)の普及により、山歩きのシーンでも、スマホが活用される機会が増えました。一番よく見かけるのは、スマホカメラでの撮影です。山の絶景に感動しながら、スマホでパシャ。仲間と記念写真をパシャ。高山植物を見つけてパシャ。そんな光景をよく目にします。

スマホには通信機能がついていますから、電波状態さえよければ、撮影したその場で、SNSに投稿したりできるので、やま歩きの楽しさ倍増です。

山歩きで、カメラ機能とともに重宝するのが、GPS(全地球測位システム)機能です。静止衛星からの電波を受信し、今現在、地球上のどこに居るのか、どちらの方角を向いているのか、が分かる機能です。宇宙からの電波なので、山や建物に遮られる心配がないので有り難いです。

山歩きをしていると、急にガスがかかってしまって、回りが全く見えなくなる場合があります。こうなると、道がどこにあるのか、自分がどちら向きに進もうとしているのか、非常に分かりづらくなります。

ガスがかかる久住山頂

そんなとき、GPS機能があると、方位と自分の位置が確認できるため、大変心強いと思います。しかも登山アプリ(登山専用の地図アプリ)を使うと、スマホ画面に地図と現在地と方位まで表示されるので、本当に助かります。まさに山歩きの味方ですね!

登山アプリのいろいろ

巷に出回っている登山アプリの主なものを挙げてみました。

地図アプリと登山アプリの違い

登山アプリと似て非なるものに、地図アプリというものがあります。地図アプリもスマホ画面に地図が表示され、GPS機能で現在地と方角まで表示されます。一見、違いな無いように見えます。しかし、一旦、山に入ると、地図アプリでは困ったことが起きます。

山奥では地図が表示されなくなる恐れ!

地図アプリの地図データは、リアルタイムに受信しながら更新しています。

例えば、今現在、牧ノ戸峠の登山口に立っているとすると、GPS機能で、自分の位置が特定され、牧ノ戸峠周辺の地図がスマホに送られてきて表示されますが、そこから、山の中に歩いて行くと、自位置の動きに合わせて、地図が更新され続けます。ところが、山の中は電波が届かないところが多々あります。すると、地図の更新が不能に!

山歩きする場合、一番必要なのは、登山口付近の地図ではなく、山の奥の地図だと思うのですが、山奥に入ると、地図が表示されない!!これではNGですね。

電波が届かないとバッテリー消費が早くなる!

携帯電話(スマホを含む)は、一般的な無線機とは異なり、常に、近くの基地局を自動的に探し、接続して動いています。電話をかけてきた相手に、「おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか、電源が入っていないので繋がりません」というアナウンスが流せるのも、待機中であっても常に基地局に接続され続ける仕様になっているから可能なのです。

ところが、この機能が、山に入ると災いします。山は電波が不安定で、接続が頻繁に切れてしまう環境です。接続が切れる度に、携帯電話は基地局を探そうとします。すると、バッテリーの消耗が激しくなってしまうのです。フル充電で、丸一日もつはずのバッテリーが途中で空になる、というトラブルが起こりやすいです。

これを避けるために、「電波オフモードに切替えて山に入る」というのが大原則になります。

そうすると、山の中で、たとえ電波が届く場所であっても、地図の受信が出来ません

登山アプリは電波オフで使える!

そこで、登山アプリです!登山アプリは、前もって、これから登る山の地図をダウンロードしてスマホに保存する機能を持っています。

一旦、保存しておけば、山の中で電波オフにしていても、GPSの電波さえ受信できれば、地図と現在地と方角が表示されるので、心強いです!

登山アプリの欠点と紙の地図

そんな有り難い登山アプリなのですが、欠点もあります。それは・・・

登山アプリは故障に弱い

登山アプリそのものはしっかり作られて万人に支持されてるとしても、アプリを載せているスマートフォンの信頼性が問題です。どんなに優れたスマートフォンであっても、岩にぶつけて液晶画面が割れるとか、長時間使用でバッテリーが空になってしまう、などのトラブルは避けようがありません。

登山アプリを過信してしまうと、万が一、山奥で故障してしまったら、遭難の危険さえ出てきます。

このようなマシントラブルが起きることは十分に想定できますので、もう一つアナログな方法、つまり、紙の地図とコンパスを併用するのがいいと考えています。紙の地図なら、仮に破れても読めますし、コンパスはハンマーでたたき壊さない限り、使えます(紙の地図をお勧めする理由の詳細はコチラ。)

ここまでの仮まとめ

山歩きするには、スマホに登山アプリをインストールし、それとともに、マシントラブルを想定し、紙の地図とコンパスも用意するとよい。(実は、想定外の危険があります)

トラブルはこれで回避できるものと思っていたのですが、登山アプリには想定外の思わぬ落とし穴があるということを今回知りました。それは・・・

登山アプリ、知っておくべき想定外の危険!

ガイドブック(本)は予算をかけて作られているので信頼性が高い!

山歩きをする時は、まず最初に、どこに行こうか?と考えますよね。そのときに参考にするのは、かつては、ガイドブック(紙に印刷された本)でした。

ガイドブックは、人件費・印刷費・輸送費などに予算をかけて作られますから、執筆者が書いた原稿がそのまま印刷されるのではなく、何らかの監修が入って、内容のチェックがなされています。

  • 定評のある登山コースか?
  • 安全に歩くことができるコースか?
  • コースに要求される登山者のレベルは?
  • そのコースを歩く際の注意点は?
  • etc

したがって、書店などで売られているガイドブックの情報は、信頼性が高いと考えられます。

山歩きツアーの情報も信頼できる!

また、どうやって行こうかという時は、山歩きをサポートしているツアーとか、山岳ガイドさんとかに相談することもよくありますね。

登山用品の店先で、山歩きツアーのパンフレットをよく見かけますが、これらも予算を割いて企画している以上、内容については、しっかり監修されていると考えられますので、信頼できる情報と思われます。

登山アプリの他の登山者が歩いたルート情報が危険!

ところが、紙のガイドブックや山歩きツアーから得られる情報と比べて、登山アプリの情報の中には、想定外の危険が潜んでいるというショッキングなことを知りました。

それは・・・

他の登山者が歩いたルートの情報

です。どういうことなのか、詳しくお話しします。

自分が歩いたルートの自動記録機能

登山アプリには、自分が歩いたルートを自動記録する機能があります。記録が終わる(下山する)と、自動的に保存され、次回の参考に使えたりして便利です。

記録は公開も可能、しかし・・・

登山アプリでは、自分の記録を保存するときに、ルート情報を他のユーザーに公開することが可能で、実は、そこに大きな落とし穴が潜んでいるというのです。

例えば、自分が穴場的な登山ルートを知っていて、そこを歩いた記録を公開してしまうとどうなるか・・・。

他のユーザが、そのルート情報を見て、「あっ、こんな穴場があったんだ。歩いてみよう!」と思ってしまうかも知れません。しかし、そのルートが果たして安全に歩けるルートなのかどうか・・・。

遭難者も発生している穴場ルート

九州ハイランドガイド協会の寺崎彰氏は、その危険性について、次の様に指摘なさっています。

アプリでは、他の登山者が歩いたルートばかりに目が行きがちだが、実際は崩落地ほとんど人が歩かない廃道だったりする場合もある。スマホ画面は小さく、広範囲を見てルートを確かめることも難しい。

寺崎彰会長のコメント(熊本日日新聞2021/5/12のコラムより)

安全を確認できない穴場ルートで、実際に、遭難者も発生しているという悲しい現状があるそうです。

登山アプリを安全に使うには

以上のことを考慮すると、登山アプリを安全に使うには、次のような配慮が必要だと思われます。

他の登山者が歩いたルートに興味が沸いたら、登山ガイドや登山地図で安全をよく確認する

他の方が歩いたルートだからというだけで安心しないで、そのルートが実際は、どんなルートなのかよく確認することが大切!

安全を確認する方法としては、例えば、山と渓谷社が提供しているYAMAKEI ONLINEのヤマタイムを利用すると、通行止め箇所などもわかります。詳しくはコチラをご覧下さい。

ヤマタイム公式サイトより

まとめ~登山アプリを安全に使うには~

それでは、まとめです。

せっかくの登山アプリを安全に使うには、紙の地図とコンパスを併用するのはもちろんのこと、計画の段階で、他の登山者が歩いたルートに興味が沸いたら、登山ガイドや登山地図で安全をよく確認する

ということになるでしょう。安全な山歩きのお役に立てれば幸いです。

【追伸】twitterフォロワーさんの元記事はこちらです

「ヤマちゃん」には、とても大切なことを教えてもらって、ほんとに感謝したいです~!